「自分を理解することの難しさを感じた」~4月のCHEKCCORI読書会

今年度第1回のCEHKCCORI読書会が開催されました。
課題本は、キム・ヨンスの短編小説集『世界の果て、彼女』(呉永雅訳 クオン)です。

978-4-904855-21-8

本書の編集を担当された藤井久子さんをはじめ、11名の方がご参加くださいました。

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他者を理解することは可能だということに懐疑的で、人は他者を誤解しがちだと考える著者が、他者との「疎通」を意識して書いた作品ですが、「泣いている女の隣でぼうっと立ったままの男性が自分につながる」(「君たちが皆、三十歳になった時」)、「自分を理解することの難しさを感じた」(「笑ってるような、泣いてるような、アレックス、アレックス」)という、他者ではなく自分を意識したという感想がありました。

「男性のキム・ヨンスがなぜここまで女性の視点で作品を書けたのか。キム・ヨンスの器用さに驚いた」(「記憶に値する夜を越える」)、「人物描写が素晴らしく、引き出しの多い作家だと思った」、「あとがきの言葉にキム・ヨンスのやさしさを感じた」、「昨年のチェッコリイベントでキム・ヨンスに直接会ったことがあるので、改めて小説を読むと、以前とは違うイメージを持つ」など作家に対する感想や、「表紙の掛け違いの眼鏡が、他者との意思疎通の難しさを表現している」という装幀への感想など、様々な感想を聞くことができました。一番感動した作品については「月に行ったコメディアン」という意見が多かったです。

 

また、弾圧を経験している作家によるこれまでの韓国文学に比べて重厚さがなく、物足りなさを感じたという感想もいくつかありました。これを受けて、クオンの金承福社長と藤井さんが、韓国の作家の世代間におけるストーリーの違いや特徴、日韓の文学の違いについて語ってくださる時間もありました。

 

さらに、金承福社長からは、「月に行ったコメディアン」が日本語のオーディオブックになっている話を、藤井さんからは翻訳者と編集者とのやり取りなどの裏話を聞くこともできました。

読書は極めて内面的な営みですが、みなさんと感想や意見を活発に交わすことで、新たな読み方を発見でき、充実した読書会となりました。参加くださったみなさま、ありがとうございました。

 

次回は5月16日(火)19時から、課題本は『完全版 土地』第2巻です。第2巻の翻訳を担当した清水知佐子さん、そして第1巻、第3巻担当の吉川凪さん、編集担当の藤井久子さんもお越しくださいます。ふるってご参加ください。

⇒ http://www.chekccori.tokyo/my-calendar?mc_id=282

(CEHKCCORI読書会モデレーター 五十嵐真希)