「アンニョン」に込められた意味~6月のチェッコリ読書会レポート

6月のチェッコリ読書会の課題本は、『ちぇっく CHECK』で翻訳家の金原瑞人さんがブックレビューを書いてくださった『アンニョン、エレナ』(金仁淑著 和田景子訳 書肆侃侃房)でした。

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短編集ですので、それぞれ印象に残った作品について語っていただきました。

面白かったのは、『アンニョン、エレナ』の英訳が「Hello,Elena」になっているが、なぜ「Goodbye」にしなかったのかという意見があったことと、それについて、「Goodbye」にしてしまうとネタばれになってしまうからではないかとして、『안녕, 병아리』というヒヨコと女の子の交流を描いた絵本を例に、「アンニョン」に込められている意味について幅広い意見が出たことでした。

 

次に、この短編集は「喪失」がテーマとなっていますが、喪失についてもいろいろな意見が出ました。韓国は国の半分と言語を喪失してきているので、「喪失」をテーマとした作品が多いのではないか、日本以上に時代の流れが早くて変化の激しい韓国では喪失感しかなく、それが作品に表現されているのではないかなどです。

 

また、「息、悪夢」に大きな衝撃を受けた、特に毛布をめくる場面でガツンときたという感想や、「めまい」に出てくるスージー・スーについて、私は軽く読み流していましたが、イギリスのパンクバンド、スージー・アンド・ザ・バンシーズのことで、スージー・スーはそのバンドの女性ボーカルだということを参加者から教えていただきました。

 

全般的に難しかったという感想の多い短編集でしたが、家族間の軋轢によって生じた喪失と傷の表現が私にとってはとても面白く、著者があとがきで「同じ家で一緒に住む木に対しても無頓着な私」と自分のことを語っているけれど、本当はとても人間に興味があって、よく観察していて、それがこの作品集に現れているのではないかと思いました。李在明の李完用暗殺未遂事件を扱った「その日」も秀逸で、金仁淑さんの筆による歴史的事件を扱った作品をほかにも読んでみたいなと思います。

 

次回は、7月26日(水)です。「本と旅」をテーマに持ち寄り企画を実施します。夏になると旅に出てみたくなりませんか。「この本を読んだら、○○に行ってみたくなりました」、例えば「『土地』を読んだら、河東に行きたくなりました」とか、「『少年が来る』を読んだら、光州に行きたくなりました」のような、旅につながる本をお持ちください。韓国に関するものでしたら、分野や言語は問いません。時空旅行もOKです。ガイドブックだけは除いてください。読書会終了後に「暑気払い」(実費各自負担)を予定しています。合わせてご予定ください。

 

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(CEHKCCORI読書会モデレーター 五十嵐真希)