7月のCHEKCCORI読書会リポート「旅につながる本との出会い」

7月のチェッコリ読書会は、「本と旅」をテーマに参加者のみなさまにお気に入りの本をお持ちいただいて開催しました。
様々な本や場所が紹介され、興味の尽きない読書会となりました。それぞれの本をご紹介します。

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『朝鮮紀行〜英国婦人の見た李朝末期』(イザベラ・バード 著 時岡敬子 訳 講談社学術文庫)

参加者2人が持参されました。ほかの参加者からも面白く読んだと好評だった作品です。「ジャーナリストとしての観察眼が素晴らしい」、「馬で行動するだけでなく大同江や漢江などを船で遡行するなど行動力のある女性で、旅行記として抜群に面白い作品」といった感想がありました。私も久しぶりに読んでみようかと思いました。

 

『クロムビの歌を聴け 済州・江汀村を守る平和の流刑者たち』(イ・ジュビン著 ノ・スンテク写真、 関谷敦子訳 かんよう出版)

済州島にある江汀村で、海軍基地建設計画によって自然保護区域のクロムビ岩が破壊され、基地建設反対運動が起こります。平和と自然を守る抵抗のドキュメントを写真と文章で紹介する作品です。迫力あふれる文章と写真からは、基地問題で揺れる済州島の別の側面を浮き彫りにします。済州島の悲惨な暗い側面を知ることのできる作品として、『大いなる時を求めて』(梁石日著 幻冬舎)も紹介されました。

 

통영을 만나는 가장 멋진 방법 : 예술 기행(統営に出会える最も素敵な方法:芸術紀行)(統営の道文化連帯著 南海の春の日)未邦訳

韓国の近現代を代表する文筆家、芸術家を多く輩出してきた統営。ここでは今も職人が螺鈿細工やヌビ(韓国の刺し子)など伝統工芸品をつくっています。そういった職人らを紹介する本です。本書を読むと何度でも統営に行きたくなるそうです。

 

한국의 숨어 있는 아름다운 풍경(韓国の美しい秘境)(イ・チョンウォン 佳林出版社)未邦訳 

旅行作家として活躍するイ・チョンウォンさんがあまり知られていない韓国の美しい風景を紹介する紀行文です。2014年に放送されたNHKラジオの「レベルアップ ハングル講座 韓国・美しい風景をたずねて」のテキストとして使われたものですので、あの本かと思い出された方も多いのではないでしょうか。鬱陵島がとても美しく紹介されているそうで、お持ちになった方は鬱陵島にぜひ行ってみたいそうです。

 

アンダー・サンダー・テンダー』(チョン・セラン著 吉川凪訳 クオン)

パジュを舞台に、揺れ動く10代の心の機微が丹念に描かれた青春小説です。この本を持ってきてくださった方は、高校生の主人公たちが通学に使っていた2番バスに乗りたいのだそうです。

パジュは出版関係の企業が集う計画都市、出版都市でもあります。出版社のおしゃれな社屋が多くあり、毎年秋には「パジュ・ブックソリ」という本のお祭りが開かれます。作家のトークイベントやテーマ展示、本の割引販売などがあります。今年は、9月15日から9月17日まで開催される予定です。

 

『耳を葬る』(ホ・ヒョンマン著 吉川凪訳 クオン)

この詩集では全羅道の美しいのどかな風景や暮らしぶりがたくさん詠われていて、読むと心が和みます。特に私が好きな詩は「百日紅の仏様」で、百日紅が満開に咲き誇る松広寺の景色をいつかこの目に焼き付けたいと思っています。

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『静かな朝の国 韓国 慶州』(宇進観光文化社)

韓国にある宇進観光文化社が日本人観光客に向けて作ったもので、参加者の亡きお祖父様が韓国を旅行した際に買われたそうです。本の間に観覧チケット(30年以上前のもの)が残されていて、旅の思い出とともに大切に保管されていたことが分かります。『静かな朝の国』というタイトルが素敵ですね。

 

『朝鮮風土歌集』(市山盛雄編 眞人社)

眞人社という短歌結社が昭和9年に京城で刊行した歌集です。第2次世界大戦が始まる前は、朝鮮半島は異国情緒を味わうのに最良の場所とされ、多くの日本人が訪れる旅行地でした。若山牧水の妻である若山喜志子が書いた序文には朝鮮半島の美しさが高らかに語られています。朝鮮半島を旅したり、居住したりした一般の短歌愛好者の歌が多く掲載されていますが、夏目漱石や与謝野鉄幹、島木赤彦などの歌もあります。

 

月刊雑誌『CHAEG』

おしゃれな書籍専門の月刊雑誌です。この雑誌を教えてくださった方はカフェで2016年11月号を手にしたところ、西大門区立イジナ記念図書館が紹介されていて、ぜひ訪ねてみたいと思ったとのこと。イジナ記念図書館は、語学留学中だったアメリカのボストンで交通事故に遭い、22歳という若さでこの世を去ったイ・ジナさんの父親が、私財を投じて建てた図書館です。

西大門区立イジナ記念図書館を紹介した『CHAEG』のページ

장소의 기억과 기억의 장소, 이진아기념도서관

 

ギルダム書院

哲学研究者の内田樹さんは、韓国でも作品が10冊ほど翻訳、出版されていてとても人気があります。ソウルの西村にある書店「ギルダム書院」では日本語を学ぶクラスがあり、『日本辺境論』の韓国語訳者である金京媛さんが日本語クラスの生徒を連れて内田樹さんの主宰する道場「凱風館」を訪れたことがあるそうです。その交流を内田樹さんのブログで読み興味を持った方が、ぜひ行ってみたい場所として「ギルダム書院」を紹介してくださいました。

 

ギルダム書院について書かれている内田樹さんのブログです。

http://blog.tatsuru.com/2012/12/26_1131.php

 

『パレスチナ・グラフィティ』(山岡幹郎著 麻布文庫)

チェッコリでの写真展とトークイベントも好評だった山岡幹朗さんの著書です。パレスチナを再訪した著者がパレスチナという国家や人権のあり方などについて語ります。写真も多数収録されています。

 

拙訳の『満州夫人』(李吉隆著 かんよう出版)を持ってきてくださった方もいました。本書は、朝鮮半島南端の多島海国立公園にある風光明媚な古今島が主な舞台となっています。作中では古今島だけでなく、周りの島々も多く出てくるため、島の位置などが分かりにくかったという意見を聞かせてくださいました。翻訳者としてありがたいご指摘でした。

 

ほかには、『アリランの歌―ある朝鮮人革命家の生涯』(ニム・ウェールズ著 キム・サン著 松平いを子訳)、『韓国の「昭和」を歩く』(鄭銀淑著 祥伝社新書)、『韓のくに紀行』(司馬遼太郎著 朝日文庫)や『韓国・朝鮮の知を読む』(野間秀樹編 クオン)も紹介されました。

 

次回は8月29日(火)です。課題本は5.18光州民主化運動を扱った『少年が来る』です。チェッコリ読書会では2回目となる『少年が来る』ですが、ハン・ガンさんがこの小説に込めた思いについて、皆さんと語り合いたいと思います。

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