イム・アンナ写真展 ≪White Veil 白いヴェールの向こうで、世界はもう一度生まれる≫
今回の写真展のきっかけは、在日写真家キム・サジ氏が、自身の写真集『物語』を韓国に紹介したいと申し出たことに始まる。写真専門ギャラリー「流歌軒」のパク・ミギョン館長を訪ねた際、サジ氏の演出写真を見た朴館長はその場ですぐ韓国の演出写真家として著名なイム・アンナ写真家をすぐに呼び出し、引き合わせてくれた。2023年のことだ。
その時の出会いと交流が、今回の展示へとつながった。
イム・アンナは、演出写真という手法を通して、現実と虚構の境界、そして人間の内面に潜む感情を視覚化する写真家である。代表作「不安のリハーサル」は、世界最高峰の写真祭であるアルル国際写真祭のポートフォリオレビューで最優秀賞を受賞し、国際的な評価を得ている。作品では、苦しむ人物の姿が写されているが、その周囲にある照明やスモークマシンが見えることで、それが「演出された現実」であることが明らかになり、見る者に強い問いを投げかける。

今回は、初期代表作『WHITE VEIL(ホワイト・ベール)』シリーズより7点を展示する。このシリーズは日常の中にある身近な対象を最小限の構成で撮影しモノドラマのように立ち上げる作品群である。白いヴェールによって覆われた対象は、見慣れた現実を一度覆い隠し、そこに潜む感情や物語を静かに浮かび上がらせる。

●展示期間
2026年4月15日(水)~5月16日(土) ※営業日のみ
言葉では語りきれない物語を、イメージによって呼び起こす——
イム・アンナの写真は、見る者それぞれの記憶や感情と結びつき、新たな物語を生み出していく。
ーチェッコリ店主 金承福
作家ノート <White Veil> シリーズ
すべての色を受け入れる純粋な色。
始まりと終わりが重なり輪廻する色。
ごく小さな染みさえも隠さない凛とした色。
白は、見る者の心と感覚をそのまま映し出す鏡に近い。
私にとって白は、一つの色にとどまらない。
見慣れたものをしばし隠し、自動的に感覚してしまうことをコントロールして
内面に潜んでいた世界を呼び起こす。
白いヴェールをまとわせた瞬間、見慣れていた対象と空間も観念と感覚も力を失い始める。その隙間で、記憶と想像は互いを手探りし、かすり、ふと染み込んでくる。私は急がない。長く見つめる時間の中で、認識を求めていた境界は曖昧になり、視線は記憶と連想の間でシーソーのように重みを交わしながら傾きを繰り返す。鈍くなっていた感覚はこれで再び目覚め、対象と視線、空間と対象、そして空間と視線はゆるやかにずれながら、いつしかひとつのイメージ、ひとつの情景へとたどり着く。
写真の中に置かれた対象はすべて、私の手の温もりが宿った日常からのものである。現実の世界が白いヴェールの中に薄れていくとき、青は未知の世界に触れた感覚の残像としてイメージに残る。それは写真の中の光が残した物理的な痕跡であり、その体験が実際に存在したことを証明する色である。私にとって写真とは、このような過程の中の想像したことを可視世界へと再び呼び戻す行為であり、その痕跡の上でもう一度の想像遊戯を可能にするものである。
<プロフィール>
イム・アンナ

イム・アンナは、世界への尽きない好奇心を写真というメディアで表現する写真家である。
北京のThree Shadows Photography Art Centreで開催された個展「想像の両刃」(2025)をはじめ、これまでに22回の個展と70回以上の国内外の企画展に参加し、精力的に活動を続けている。
主な受賞歴に、サヤ写真賞(2025)、日宇写真賞(2020)、フランス・アルル国際写真フェスティバル ポートフォリオ大賞(2019)がある。
作品と活動は The New Yorker や British Journal of Photography などのメディアでも紹介され、韓国を代表する現代写真家の一人として評価されている。
主な出版物に写真集『外眼球と天使』『Anxiety ON/OFF』『冷たい英雄』、翻訳書『写真の主要概念』『写真を批評する方法』がある。
カリフォルニア州立大学大学院(写真・混合メディア専攻)修士課程修了(1996)、弘益大学校にて写真学博士号取得(2020)。現在は祥明大学校 写真映像メディア学科で教えている。