第1期[チェッコリ大学]分断に抗する芸術家たち
チェッコリ大学の新規講座です。
『日本リベラル派の頽落』や『越境画廊―私の朝鮮美術巡礼』などの著作でもおなじみの徐京植先生に登壇いただきます。
全6回で行われる講座の第1期(3回)の申し込みページです。
<講義内容>
1945年の日本植民地支配からの解放もつかの間、朝鮮は南北に分断され、48年には南北に二つの政権が成立、やがて朝鮮戦争という内戦が起きた。この歴史は朝鮮民族の成員すべての生に甚だしい傷を刻み、その傷は今も疼き続けている。ただ芸術家たちの中には、このような不条理で過酷な運命に投げ込まれながらも、自らの芸術を通じて運命に抗い、人々の心を動かす作品を残した人たちがいる。
今回の第1期ではこのような芸術家たちの中から、3人を選んで紹介する。分断時代を生きる朝鮮民族の心を知るために、必ず知っておくべき芸術家たちである。
①1月29日(水) 分裂というコンテクスト– 「越北画家」李快大(イ・クェデ)
李快大は植民地時代に日本の帝国美術学校(現在の武蔵野美大)に学び、朝鮮画壇の若き指導者と目され、朝鮮戦争が勃発すると北の人民軍側についたとして米軍捕虜となり、越北(軍事境界線を越えて北へ行くこと)の道を選んだ。そのため韓国では長くタブー視され作品の展示もできなかったが、近年注目されるようになり、大規模な展覧会も行われている。
②2月26日(水) 傷ついた龍 – 現代音楽の巨匠 尹伊桑(ユン・イサン)
尹伊桑は世界的に著名な現代音楽の巨匠。解放後当時の西ドイツに留学して、東洋と西洋を融合–というより止揚するその独自の音楽世界が広く認められた。しかし、朴正煕軍事独裁時代に他のヨーロッパ在住の韓国人知識人たちとともに韓国に拉致連行され、スパイ、反国家活動などの嫌疑で投獄されたが(東ベルリン事件)、驚くべきことに尹は投獄中にもオペラなどを作曲し続けた。国際世論の圧力の結果、釈放され西ドイツに戻った後は、より普遍的な平和の祈りとも言える作曲活動とともに、南北統一運動や民主化運動に余生を捧げた。
③3月25日(水) マンホールから – 密航画家 曺良奎(チョウ・ヤンギュ)
曺良奎は解放後の南朝鮮で美術教師をしていたが南朝鮮単独選挙反対など社会運動に携わり、李承晩政権の圧迫を逃れて日本に密航、東京枝川の朝鮮人集住地区に住んだ。やがて在日民族団体の雑誌に挿絵などを描いた。1959年に始まった「帰国運動」により北に帰国し、やがて消息不明となった。その作品は洲之内徹、針生一郎など日本人美術関係者にも高く評価され、東京の国立近代美術館や宮城県立美術館に収蔵されている。朝鮮の近現代美術を語る上で不可欠の存在といえるが、このような経歴ゆえに生まれ故郷の韓国でも彼を知る人は多くない。
第2期(4回~6回)の予定は下記の通りです。2月には追って募集を開始します。
④4月22日(水)尹錫男(ユン・ソンナム)*現代韓国の指導的女性アーティスト
⑤5月27日(水)申潤福(シン・ユンボク)*朝鮮王朝時代の異端の天才画家
⑥6月24日(水)鄭然斗(チョン・ヨンドゥ)*現代韓国の代表的アーティスト
参考書籍:徐京植著『越境画廊–私の朝鮮美術巡礼』(論創社)、および同『私の西洋美術巡礼』(みすず書房)
※いずれもチェッコリで販売します
<講師プロフィール>
徐京植(ソ・キョンシク):作家、東京経済大学教授。1951年京都市生まれの在日朝鮮人。主な著書:『私の西洋美術巡礼』(みすず書房1990年)、『ディアスポラ紀行』(岩波新書2000年)、『汝の目を信じよ!–統一ドイツ美術紀行』(みすず書房2010年)、『越境画廊―私の朝鮮美術巡礼』(論創社2015年)、『抵抗する知性のための19講』(晃洋書房2016年)。美術関係以外の著作も『在日朝鮮人ってどんなひと?』(平凡社2012年)、『日本リベラル派の頽落』(高文研2017年)など多数。
<講義日程>
■日時:2020年1月29日(水) 、2月26日(水)、3月25日(水)各19時~21時
■受講料:各回2500円 ※3回券はまとめて7000円
■定員:20名