僕はね心を落ち着かせるために美術館を訪れているうちに「美術」に関心をもったんだよ。

2月7日徐京植(ソ・キョンシク)先生を迎えて「アートのコンテクストから”民族”を考える」を開催しました。

徐先生に講演依頼メールを送っているのを見た店主きむが駆け足でやってきました。「ささきさん、てだねよ」と。実はお恥ずかしながら徐先生が人権運動家として著名な方とも存じ上げず、昨年シンポジウムでお話を聞いて「朝鮮美術に関するお話をお願いしたい」と大変気軽にメールをお送りしていたものですから、きむがその有様に驚いたというわけです。

知らぬが何とか、とはよく言ったものである意味無知だった私だからこそ気軽にお願いできたのでした。

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この日のお話はまずは最近の話題、トランプ大統領に抗議してMoMA(ニューヨーク美術館)の行動から、美術で何かを変える力は持っていないが、意思を伝えることはできること、そして大統領令が出てわずか数日で行動を起こせたその意識の高さとスピーディな意思決定ができる枠組みについてからでした。

もうこの導入のお話で、皆さんの気持ちが引き込まれていく様子が感じられました。

この日の本題は、李快大(イ・クェデ)、李仲燮(イ・ジュンソプ)、曹良圭(チョ・ヤンギュ)の植民地支配解放後の3人の画家の作品と生き様をお話いただきながら、植民地時代、解放、そして国家分断という過酷な時代に翻弄された中で開花していった朝鮮現代美術の世界、そのコンテクストから「民族」を見るという内容でした。

ひと言では語れない彼らの作品から見えるもの。
そして同時代を生きた朝鮮民族の近代美術家たちは同じ空間で作品を展示されたことも一度しかないという現実などを知ることに。

わずか1時間足らずではとてもとても思う存分お話いただけず、あっという間に時間が過ぎてしまいました。
店主きむからはすぐに「第2回はいつお願いできますか?」という発言に皆で思わず拍手。もっと1つずつの作品、じっくり拝見したい。お話を伺いたい、そう思ったのです。

そんな美術関するお話はもちろん、興味深かったのですが、私の胸に残ったひと言は「僕はね、講演(人権問題など)に出かけることが多かったんだけどね、講演の前には心を落ち着かせたくて、その地の美術館を一人で見に行っていたんだよ。それで僕は美術に興味を持ち始めただよ」という言葉でした。

徐先生に課せられた、そして先生ご自身もご自身の使命としても語っていらした「人権」に関するお話ではあるけれども、それはある意味、神経をすり減らし、全身で立ち向かわなければならないことだったのでしょう。

そんな先生の心に「美」の世界は違う世界を見せてくれたのでしょうか。

講演後にも控え室で「こんな(美術)話なら、いつでもやるよ。美術の話は楽しいんだよ」と仰っていただいたのです。
ただちょっと最近肩の調子がお悪くて、この日も少々お辛そうでしたので、次回はぜひ肩が良くなられてから!とお願いしました。

お話の中でお気に入りの美術館として「宮城県美術館」を挙げておられ、思わず心の中でガッツポーズ。毎年夏冬と仙台に帰省(旦那様の実家)している私には何とも嬉しい情報で、次回の帰省が一気に楽しみになりました。

そしてこの日のお話で伺った3人の画家たちの作品もぜひともこの目で確かめに行きたいと思わずにはいられない、一時間でした。
どうぞ第2回もお楽しみに!

(宣伝広報担当 ささき)