3月にはいり、本来ならもうすぐ桜が咲くかとそわそわするシーズンですが、
心のしぼむ出来事が続きますね。
いろんな情報が錯綜するなか、デマに踊らされないこと、
正しい情報を得ることの難しさを実感しています。
そうかといって危険に対して常に緊張状態なのはしんどいもの。
せめて本がその癒しの助けになればと思う今日この頃です。
ご来店できない方のためにも、今月はブックハウスの更新を頑張りたいと思います!
(土曜店長 ぱく)
◆◇ 「ハン・ガンも尹東柱も! もっと知りたい“詩人の国”」特集 ◇◆
何かと落ち着かない毎日ですね。
こんな時だからこそ、ゆったりとゆっくりと詩の世界を楽しんでみるのは
いかがでしょうか?
昨年2月に特集した「ハン・ガンも尹東柱も! もっと知りたい“詩人の国”」を
ご紹介しておきます。ナ・テジュ詩人の作品は最近人気沸騰中なので、
春らしい2作品を追加でご案内します。こちらもぜひどうぞ。
「ハン・ガンも尹東柱も! もっと知りたい“詩人の国”」特集
http://shop.chekccori.tokyo/products/detail/1294
http://shop.chekccori.tokyo/products/detail/1295
◆◇ 店主きむより ◇◆
『野良猫姫』(ファン・インスク著、生田美保訳、クオン「新しい韓国の文学」シリーズ11)の中に、
二十歳の主人公が自作の詩を高校時代の先生に見せるこんなシーンがあります。
空しい、私の年
私の心は空っぽで
舌は乾いてカラカラです
毎日私の窓辺には
きれいな太陽がひとつ出ては沈みます
ときには雨がのぞきこみ
濃い霧が白粉花の香りを放って
そこを離れないこともあります
けれども太陽が出ようが出まいが
雨が窓を叩こうが叩くまいが
霧が白粉花の香りを放とうが放つまいが
私は気にしません
私は泣かないのです
それに、笑いもしません
私の心は空っぽで
舌は乾いてカラカラです
夢をみる
そこはポプラの森
私はじっと座っています
落ち葉は霜と絡み合う
私は泣きません。それに、笑いもしません
銀色の根元を払ってみます
それは固くて冷たい
この森の風ほどにも
私は見上げてもみます
梢はキラキラと輝き
木はとても高く
私はただじっと座っています
カササギが鳴いて飛んでいきます
とても静かです
そうして夢から覚める
私は泣きません
それに、笑いもしません
私の心は空っぽで
舌は乾いてカラカラです
でも私には少しわかります
すべてが難しくなったということ
秋には一人、冬の訪れを恐れていたように
私に伸びる運命の手
決定を下すときが来ます
夜を受け入れ
朝を待たねばなりません
ああ、私は
ポプラの森に行きたい
私の年が空しいときは
ジョン先生は、最後の行、「私の年が空しいときは」に赤ペンでサッと線を引き、
「空しいって何よ、その若さで」と言った。
そして、しばらく首をかしげて、赤線のわきに「私の年が揺らぐときは」と書いた。
「私の年が空しいときは」のほうが実感がこもっていたが、
先生が直してくれたほうが格調があるような気がして、それに従うことにした。
それで、タイトルも変えなければならなくなった。
稲妻のように「眠れる森」という題が浮かんだ。
(『野良猫姫』、P356-360)
http://shop.chekccori.tokyo/products/detail/79
初めて読んだ時、まるで自分の話かと思いました。
夢の中でも詩を書いていた私に、‟たくさん書くのも大事だけれど書いたものを何度も何度も見直すこと。
それよりもっと大事なのは他の人が書いたものをたくさん読むことだよ”と教えてくれた先生がいます。
先生のおかげであらゆるジャンルの文学を読むようになり、
気付いたら本づくりまで手掛けるようになっていました。
ずっと先生の作品を紹介したいと思い続け、ようやく一冊の本ができました。
『呉圭原詩選集 私の頭の中まで入ってきた泥棒』です。
何冊もの詩集のなかからどの詩を入れるか、
翻訳者の吉川凪さんと一緒に丁寧に選びました。
先生は2007年に他界されましたが、今でも教え子たちや読者に愛されています。
毎年命日には集まってお墓参りを(樹木葬だったのでその木の周りで詩の朗読を)したり、
先生の詩や写真の作品展を開いたり。愉しむ人がいる限り、作品の命はずっと続くんですよね。
今回の詩集を通して日本語圏の友だちと一緒に作品を愉しめることを、先生もきっと喜んでくれると思います。
◆◇ クオンのおすすめ ◇◆
■『呉圭原詩選集 私の頭の中まで入ってきた泥棒』いよいよ刊行!
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店主きむよりでもお知らせしましたが
CUON韓国文学の名作002として、詩人 呉圭原(オ・ギュウォン)の
オリジナル詩選集を刊行します。
申京淑(『母をお願い』)、ファン・インスク(『野良猫姫』)、
ハ・ソンナン(『あの夏の修辞法』)、チョ・ギョンナン(『風船を買った』)、
金承福(CUON&CHEKCCORI)……
みんな呉圭原の教え子です。
詩壇だけでなく文壇にも大きな影響を与えた詩人の作品はウィット満載で
なかには、「これも詩?」と思うようなものも。
ちなみにサジャンニムは、遺稿詩集に収められている詩が好きだそうです。
広い世界を、その一瞬を切り取って表現しているのが良いよねと。
ぜひお気に入りの詩を見つけてみませんか?
*3月19日(木)から先行発売を予定しています。ご予約はこちらから
http://shop.chekccori.tokyo/products/detail/1554
■ただ今制作中:韓国文学ショートショート08~10
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4月初旬に「韓国文学ショートショート」を3冊同時に刊行します!
社会から疎外された人々の姿と貧困の問題を見つめ続ける作家
コン・ソノクの『私の生のアリバイ』(カン・バンファ訳)、
天才画家の評伝を書くための取材が「私」を不思議な世界へと誘っていく、
『私たち皆のチョン・グィボ』(イ・ジャンウク著、五十嵐真希訳)、
ベトナムのラブ・マーケットを舞台に愛の行く末を描いた、
パン・ヒョンソク著『サパにて』(きむ ふな訳)。
もちろん、韓国語の朗読音声も準備中です。お楽しみに!
__おしまいに__________________________
店内が奥に2mほど広くなり、面陳で本も選びやすく、イベントもゆったりに。
そうそうスクリーンを天井から吊るしたので、見やすくなりましたよ。
イベントを思い切り開催できる日を楽しみに♪
(ささき)
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