CHEKCCORI通信 Vol.175【森崎和江さんの『慶州は母の呼び声 わが原郷』にまちづくり、そして文学の研究者が迫ります】

※このメールは、チェッコリからお送りしています。

2023.7.20

CHEKCCORI通信 Vol.175 http://www.chekccori.tokyo/


ごあいさつ

告白します。最近、ジュノ(2PM)に입덕しました。たぶん……。

いま訳しているエッセイの著者さんが、ある人たちの推し活をしていて、「えっ、これって推し活なの」と自分でも戸惑ったというエピソードが出てくるのですが、まさにそんな感じ。最初は歌やダンスが上手だなと思ったのですが、いろいろ知っていくうちに努力家であることがわかり、その成果がいま実って輝いてるところをまぶしく見ています。

きっかけはドラマ『キング・ザ・ランド』でした。『赤い袖先』はまだですが、ぜひ観なければ! 今日(20日)のイベントもとても楽しみです。
https://chekccori230720.peatix.com/

(しみず)

お知らせ

オープン8周年記念展示会
「Liber Sapiens:本を読んだ人類」開催中

オープン8周年を記念し、「絵の中の本たち」をテーマにした巡回展を開催中。 あなたのお気に入り作品を選ぶ投票も行っています。

詳細はこちら

『小説家の映画』タイアップ企画は22日まで

『小説家の映画』(ホン・サンス監督)の日本公開を記念したタイアップ企画です。 映画化された原作小説を韓国語版、日本語版ともに取り揃えています。

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第7回「日本語で読みたい韓国語の本 翻訳コンクール」開催

今年で第7回を迎える「日本語で読みたい韓国語の本 翻訳コンクール」を開催されます。応募は9月より始まり、締め切りは2024年1月末です。

詳細はこちら 課題作を購入する

「聞く文学」オーディオブック特別価格販売中

韓国の著名俳優103人が韓国や世界の名作文学を一人一作品ずつ演じながら朗読し、ひとつのUSBに盛り込んだオーディオブックを特別価格で販売します。

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2023年夏季休業のご案内

2023年8月13日(日)から16日(水)まで夏季休業とさせていただきます。期間中は問い合わせ対応、オンラインショップの発送業務もお休みとなりますので、どうぞご了承ください。

詳細はこちら

イベント情報


7月20日(木)19:00~20:30
【会場+オンライン】『赤い袖先』原作小説日本語翻訳版出版記念
-担当編集者座談、小説でこんなにときめくなんて!

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7月21日(金)19:00~20:30
【オンライン】「⽇本語で読みたい韓国の本 翻訳コンクール」を語る会
―第6回課題作『総合』編

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7月22日(土)18:00~19:00
【会場+オンライン】森崎和江著『慶州は母の呼び声 わが原郷』
韓国語版翻訳に掛けた日韓2人の翻訳者たちの思いとは?

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7月28日(金)19:00~20:00
【会場+オンライン】日韓の識者が語り合う
「日本・韓国の複合差別と対抗運動」

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8月3日(木)19:00~20:30
【会場+オンライン】伊東順子の”韓国事情”お話します
ー第4回『続・韓国カルチャー』から見る韓国社会

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8月5日(土)11:00~12:00
【会場+オンライン】『韓国ひとめぼれ感動旅』刊行記念イベント
ー韓国通の2人が語る韓国旅行の魅力と絶品韓国グルメ

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8月9日(水)19:00~20:00
【オンライン】翻訳者2人が挑戦!「ウェブトゥーン翻訳から新たなステージへ」

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8月10日(木)19:00~20:30
【会場+オンライン】写真家・金サジ×翻訳家・斎藤真理子が語り合う
「ただよう写真、言葉、身体」

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8月19日(土)11:00~12:30
【会場】5年ぶりに再び挑戦!「モバイルアート」ワークショップ

お申込みはこちらから

クオンのおすすめ

世界で注目が高まる詩人・金恵順

『死の自叙伝』の著者・金恵順さんが世界各地の詩祭に次々と出演しています。6月に招へいされたベルリンの詩祭では「Tongueless Mother Tongue」と題するスピーチも行われました。この中で、1970年代に出版社で働いていた当時何度も検閲にあったこと、台詞が黒く塗り潰された戯曲をもとに声を発することなく演じられた舞台を観ながら、演者たちの声にならない声や叫びを”聞いた”経験*も語りました(*ハン・ガン著『少年が来る』を読んだ方はピンと来たのではないでしょうか。「七つのビンタ」には金恵順さんの体験も投影されています)。

肉体的な死より先に言葉を奪われることを身をもって体験した金恵順さんは、同じスピーチの中で、詩を作ることは幽霊のような声を聴くことだと語ります。抑圧され、拒絶され、繰り返し排除され、しばしば殺害された存在の声を――何より、女性の声を。

また、今月公開された<The New Yorker>の記事では50年にわたる金恵順さんの詩作を紹介すると同時に、英訳を手掛ける詩人チェ・ドンミさんとのやりとりも紹介されています。ますます注目されている金恵順さんの詩を、日本語で読んでみませんか?

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【ただいま制作中】『風景から見た東アジア庭園の美』(パク・ウニョン著、姜信子監訳、申樹浩訳)

8月末に刊行するCUON人文・社会シリーズ最新刊の制作が大詰めとなりました。近年このシリーズからはインテリア、茶文化など一つのテーマを日中韓三か国で比較しながら論じた本の刊行が続いています。最新刊のテーマは「庭園」。京都の龍安寺、蘇州の拙政園、潭陽の瀟灑園など、日中韓それぞれの庭園の美しさと特徴に「絵画的風景」と「詩的風景」というアプローチで迫ります。

店長のおすすめ本


★店主きむ★おすすめの人文書

『서울 라이프스타일 기획자들(ソウルのライフスタイル企画者たち)』

ここ数年ソウルの風景は、大きいことよりこじんまりしたもの、手作りのもの、人の手がかかって誠意が感じられるものやことが多くなりました。その風景に出会う度にこれを考え出した人は誰だろう、と思ったことがあります。その疑問がこの本で解けました。ソウルのあちこちで安定的に自分の世界を展開し、消費者を惹きつけたプレイヤーたちの話が聞ける貴重本です。ブランディングに関する話でもあり、起業を目指す人たちには先輩からのアドバイスでもあり、ソウルが好きな日本の読者にとっては、変わったソウルの裏側を知る高級ガイドブックにもなります。私にとっては翻訳出版して日本語の読者に届けたい、と全身でそう思ういい本でもあります。

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★ノ店長★おすすめの人文書

『모자의 나라 조선(帽子の国、朝鮮)』

‘帽子’という事物を通じ朝鮮を覗き込んだ人文書。朝鮮における帽子とは、衣服の装身具の役割を超え、身分と階級、職業、年齢、性別を象徴した一種の社会的コードでした。朝鮮人は帽子を名誉の象徴として大切にし、衣服の一部と考えていたので家に入る時も靴は脱いでも、帽子だけはかぶったままで、食事中はもちろん、王の前でも帽子は脱がなかったのです。作家は朝鮮王朝518年を貫いた身分制度から生まれた朝鮮の帽子が作り出す東洋と西洋の文明観の違いや19世紀の朝鮮で起きた出来事を冷静な目線で語っています。また驚くほど様々な種類の帽子とその材質、製作方法、用途、使い方などが詳しく説明されています。特にナンモ(난모)を愛した朝鮮の女性たちと、カッ(갓)を大切にしたソンビたちのエピソードが興味深いです。

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★やまぐち店長★おすすめの短編集

『모든 것들의 세계(すべてのものたちの世界)』

『브로콜리 펀치(ブロッコリーパンチ)』のイ・ユリさんによる短編集。イ・ユリさんは2020年にデビューした比較的新しい作家で、”イ・ユリユニバース”と呼ばれる独特の世界観がおもしろく、この短編集に収められている作品にも、人間ではないものや元人間が登場して、シュールな状況に思わず、くすっと笑わされます。その中の一つ「フェアリーコイン」には妖精が登場します。不動産詐欺に遭った夫婦が損失額を取り戻そうと、家で飼っている妖精を利用して大掛かりな仮想通貨詐欺を企てるお話なのですが、果たして計画は成功するのでしょうか?不思議なイ・ユリユニバースをぜひ体感してください。

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★かな店長★おすすめのエッセイ

『이렇게 살면 큰일 나는 줄 알았지(こんな生活してたら大変なことになると思ったよ)』

登録者数22.5万人の人気YouTubeチャンネル『リトルタネの賢い生活』を運営するYouTuberの初めての著作です。リトルタネはコロナ禍に村へと引っ越した30代女性。YouTubeでは落ち着いたトーンの声とコミカルな表現で田舎でのゆったりとした暮らしの様子を伝えています。童話に出てきそうな素敵なカントリーハウスに暮らす彼女は、「倒れたら休んでいこう」がモットー。日本でもコロナ禍をきっかけに地方移住する人が増えているので、彼女の暮らしに憧れたり、共感する人も多いのではないでしょうか。

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ミニコラム

<スタッフさわだの、子どもと韓国書籍の間で>

#4 「마흔」を前に

2歳4ヶ月になった子どもは、最近とにかくあまのじゃくだ。顔は洗いたくないけど、水道の水は流し続けたい。朝食にパンがほしいというので渡すと「おにぎり!!!」と泣き叫ぶ。こうして文字にすると可愛らしい気もしてくるが、なんでもイヤイヤ、「魔の2歳」なんて呼ばれるお年頃。結構しんどい。

小学校入学前後には、中間反抗期なるものもあるらしい。気は早いが、いつかは本格的な反抗期もやってくる。次々に節目の時期がやってきて、子も親も一つひとつ乗り越えなければならない。

大人になってからはどうだろう。◯◯期ではないけれど、20歳、30歳の節目は、私の場合は気づけば忙しく過ぎていった。ただ、なんとなく感じている。「40歳」は何か違うと……。

先日、チェッコリのインスタグラムで紹介した一冊が、他の本よりずいぶん反響が大きかった。『마흔, 완전하지 않아도 괜찮아(四十、完璧じゃなくても大丈夫)』という「마흔」(40歳)に関する本だった。調べてみると「마흔」は今、韓国の出版業界でも一つの重要なキーワードになっているという。

韓国大手オンライン書店「YES24」によれば、2022年、「마흔」というキーワードが入る書籍の販売量は、前年比約1.65倍。今年3月中旬時点で、直近2ヶ月間の販売量は前年同期比13倍以上に急増し、新刊も11冊出版されたという。好調な理由はいくつか挙げられている。若い世代を映像メディアにとられ、活字に親しむ層の中心が自然と40〜50代になった「読書市場の高年齢化」を挙げる声もあれば、生き方が多様化し正解がない上に100年生きるとされる時代に、40歳以降をどう生きればいいか、本に助言を求める人が多いという声もある。

本に出てくるキーワードの多様さからも、この世代がぶつかる問題の複雑さが伝わってくる。仕事、転職、中堅社員としての役割、結婚、非婚、離婚、介護、高齢の親との葛藤、子どもの教育・反抗期、更年期、病気……。どれも大きな選択をともない、責任も重い。そうした問題をどうにか解決しようともがく間に自分自身の大切なものや夢が置き去りになり、気づけば「私」を見失う人が多いようだ。

そういう私はあと4年で40歳になる。もがいている間に見失ってしまいそうな、自分の奥底に閉まっていた願いや夢があったかなと、考えてみた。20代後半の頃、会社を辞めて韓国に語学留学するか迷っていた時のことを思い出した。それ以前に大好きで学んでいたけれど思うように習得できなかった英語とフランス語の苦い経験もあり、人生の終盤に「昔は韓国語も頑張ってたんだけど、結局中途半端で忘れちゃったんだよね」と話している自分が頭に浮かんだ。それだけは嫌だった。

あれから約10年。やりたいことはあっても体が追いつかなかったり、誰かと比べてへこんだり。自分なりに頑張ってきたけれど、心から自分に花まるをあげる気持ちになれないまま、なんとなく40歳を迎えそうだった。今、「마흔」の本に向き合ってみて気持ちが変わりつつある。

不安もあるけれど、そういう時期なのだ。いざとなったら、視野を静かに広げてくれる本たちがある。何より幸い、周りには楽しむこと、新しいことを見つけ続けている人生の先輩たちがいる。次の10年はもう少し、より良い方向へ進める気がする。

(さわだ)

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