CHEKCCORI通信 Vol.190【ハン・ガンさんノーベル文学賞受賞 万歳!】
CHEKCCORI通信 Vol.190 http://www.chekccori.tokyo/
ごあいさつ
10月はハン・ガンさんのノーベル文学賞受賞で幸せいっぱいの日々でした。お祝いのメッセージを次々といただき、直接お店に足を運んでくださったお客さまも多く、感謝に堪えません。
『菜食主義者』や『少年が来る』をはじめ、在庫がなくなってしまった本のご予約注文も大変な数となりました。本当にありがとうございます。お待たせしているお客さまには今週末以降、順次お届けする予定ですので、どうぞ楽しみにお待ちください。
お知らせ
K-BOOKフェスティバル 2024 in Japanに出店
11月23日(土)、24日(日)に東京・神保町で開催されるK-BOOKフェスティバルに出店します。CHEKCCORIならではのラインナップを準備していますので、どうぞお立ち寄りください。
詳細はこちら「ブックサンタ2024」であなたもサンタに
NPO法人チャリティーサンタが運営する社会貢献プロジェクト「ブックサンタ」に今年初めて参加しています。あなたも誰かのサンタになってみませんか。
詳細はこちら営業時間の変更について
店内でのイベント開催のため、下記のとおり営業時間を変更いたします。ご来店の際、お間違えのないようお願いいたします。
10月31日(木)12時~18時
11月8日(金)12時~18時
イベント情報
10月31日(木)19:00~20:00
【店内+オンライン】話題の映画にも出演中! 韓国俳優がみる日本の俳優と演技
お申込みはこちらから
11月8日(金)19:00~20:30
【店内+オンライン】日本と韓国の本屋事情:本屋の生存探究を見つめる出版ジャーナリストたちのブックトーク
お申込みはこちらから
クオンのおすすめ
セレクション韓・詩シリーズ最新刊『チャン・ソク詩選集 ぬしはひとの道をゆくな』、好評発売中です。
著者のチャン・ソクさんは1957年生まれ。ソウル大学国語国文学科に在学中の1980年に詩人としてデビューしたものの、その後40年間は詩の発表をやめ、2020年に初の詩集を刊行した、異色の経歴を持つ詩人です。
本書には、現在発表されている全四作の詩集から、クオン代表の金承福、同書翻訳者の戸田郁子さん、そして著者自身がセレクトした61篇が収録されています。詩人としてのデビュー作となった「風景の夢」ほか、タイトルにも引用されているフレーズが印象的な「鮭の道」、また光州民主化抗争についてうたった「数字が重要なとき」など、静かな言葉に強い意思の込められた作品が並びます。
「チャン・ソクの詩のなかでは、具体と抽象が、思考と感覚が、叙事と抒情が、極微と無限が、私と公が、鮮やかな劇的緊張を孕みつつ均衡を保っている。…(中略)彼の詩は民族や言語や文化の壁を越えて、私たちひとりひとりの心の深みにひそむ普遍的な琴線に触れてくる。」
(詩人・四元康祐さんによる解説より引用)
CHEKCCORI BOOK HOUSEで購入する「韓国文学ショートショート」シリーズ新作2冊が11月に刊行!:『偶像の涙』、『夏にあたしたちが食べるもの』
良質な短編を日本語と韓国語の2つの言語で楽しめる「韓国文学ショートショート」シリーズ。今回は、第7回「日本語で読みたい韓国の本 翻訳コンクール」の課題作となった2編を刊行します。コンクール初のダブル受賞を果たした金子博昭さんの日本語訳をご堪能ください。
『偶像の涙』:ことあるごとに暴力で周囲を威圧する不良グループのリーダー、クラスの秩序を保ちたい担任教師、そして級長。各者の対立と葛藤を見守る高校2年生の男子生徒の視点で語られるアイロニカルな物語。
『夏にあたしたちが食べるもの』:30歳を過ぎ、ミュージシャンの夢を諦めた「あたし」。ある日、育ての親であるおばから自分が経営する編み物店の店番をしてほしいと頼まれやむなく帰郷する。淡々とした一人称が心地よい作品。
11月23日、24日、東京・神保町で開催されるK-BOOKフェスティバル(入場無料)に著者が来日予定です。ぜひこの機会にお手に取ってみてはいかがでしょうか。
『偶像の涙』と『夏にあたしたちが食べるもの』は、ただいまご予約受付中です。本ができ次第、送料無料でお送りします。
『偶像の涙』を予約注文する
『夏にあたしたちが食べるもの』を予約注文する
店長のおすすめ本
★しみず店長★おすすめのエッセイ集
『마음을 보내려는 마음(心を届けようとする心)』
詩と親しみたいけれど、どこか難しく感じられてなかなか親しめないという人におすすめ。毎日繰り返される日常の景色と著者の頭の中を巡る雑多な考えが、比喩的表現をふんだんに取り入れた美しい文章で綴られています。失ったもの、立ち止まること、屋根裏部屋、洗濯など身近なテーマで書かれた詩的な文章は、読む者の想像力をかきたて、一つひとつ言葉をかみしめたくなるような読書へ、深い思考へと導いてくれます。ミュージシャンで作家のヨジョさんが推薦の辞として、「彼女にあって私にもある、ごくごく平凡なことについて語られたエピソードを読むと、私のありふれた毎日がいつの間にか『特別なもの』に変わっている」と寄せているとおり、ささやかな日常がとても愛おしく感じられる散文集です。
CHEKCCORI BOOK HOUSEで購入する★ジヨン店長★おすすめのイラストエッセイ
『흐릿한 나를 견디는 법(ぼんやりとした自分に耐える方法)』
私たちの日常には、疲れと楽しさ、絶望と希望が絶妙に入り混じっている。時には自分自身が嫌になったり、ある日には理由も知らず涙がこぼれたりすることもある。そんな不安や憂鬱に包まれた日々の中で生きている人々に、このエッセイは、辛いなら逃げてもいいと励ましてくれる。ここに登場する、もうひとつの自我「無名」は、内面を深く覗き込みながら、日々を生き抜くための自分だけの方法を少しずつ見つけていく。そして、自分の世界を築きながら、幸せを手繰り寄せ、誇りを持てる自分になるために一歩一歩進んでいく。無名が伝える「克服」と「幸福」は、決して壮大で立派なものではない。私たちはそれぞれ自分の地獄に閉じ込められながらも、同時に自分だけの天国を目指している。かすかに消えかけていた自分が、ふと立ち上がり「何かをしてみよう」と思える瞬間が訪れることもある。そこで、最も大切なのは、「私の幸せ」だと著者は語る。
CHEKCCORI BOOK HOUSEで購入する★スタッフさわだ★おすすめの絵本
『나는 사자(私はライオン)』
「ライオン」と聞くと思い浮かぶ立派なたてがみのオスライオンは、この絵本では背景の一部。主人公は荒々しい自然の中で子を産み、群れを守りながら生きぬくメスライオンです。皮膚や筋肉は本物に限りなく寄せて描かれ、体温や生々しいにおいまで伝わってきそう。読んでいるこちらがビクッとするほど視線も鋭く、真剣で力強いライオンの語りにも背筋がのびます。作者は恐竜をテーマにした多くの絵本で人気の作家キョン・へウォンさん。特定のライオンではなく、どんなメスライオンにも当てはまる話として描き、それはそのまま懸命に生きるあらゆる女性や母親にも繋がっていると話します。「現代の混乱の中で子育てに奮闘する母親たちの応援になる」との推薦文も。個人的には人間の世界とは比較にならない荒野での子育ての厳しさに圧倒されるばかりでした。韓紙の味わいも大きな魅力です。
CHEKCCORI BOOK HOUSEで購入する★宣伝広報担当ささき★おすすめのインタビュー集
『外国語を届ける書店』
2022年に出版された『「その他の外国文学」の翻訳者』以来、またなんて面白い企画だ、と感嘆! ハン・ガンさん作品など韓国文学も数多く手掛ける白水社さんのインタビュー集『外国語を届ける書店』です。日本に居ながらにして原書を読みたい、買いたいという思いに応える「外国語を届けてくれる」書店の声を伝える一冊。ロシア語、中国語に、韓国語を含む9つの外国語専門書店が紹介され、CHEKCCORIも取材いただきました。フランス語のオンライン書店「レシャピートル」さんの「お客さんから勉強させてもらえた」との言葉に頷き、中国語の「東方書店」さんの「お客さんのほうがどう考えても詳しいんですよ。(中略)質問に答えるというよりも、話の受け皿になる」には、なるほどと納得。そしてどの書店もが日々「お客様」たちとの出会いの中に生きている、と改めて実感させてもらいました。各書店のおすすめ本、そして編集部のお買い上げ本もぜひチェックを!
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ミニコラム
<スタッフさわだの、子どもと韓国書籍の間で>
#6 韓国の本が「日常」になり、「大切なもの」になる道の途中で
10月10日木曜日、午後10時過ぎ。7ヶ月と3歳の2人を寝かせながら自分も眠ってしまった私は、夫が帰宅した物音でぼんやり目を覚ました。そして彼の一言で飛び起きた。「ハン・ガンがノーベル文学賞だって!」
スマホを見ると、チェッコリスタッフで作るLINEのトークルームでは2時間前から驚きの声があふれ、店にはハン・ガンさんの書籍の注文が続々と入り始めていた。
翌朝も注文の勢いは増すばかり。普段は育児のため在宅で仕事をさせてもらっている私も、どうにか店で戦力にならねばと思ったものの、7ヶ月の子どもを当日急に預かってくれる場所はない。自宅でSNS投稿やオンライン書店の更新を微力ながら続けた。
顔も洗わずパソコンに向かい、ふと時計を見ると午後2時。午前中は少し寝てくれていた子どもも泣き始めたので、キーボードを打つ手を止めた。あやしながらふと本棚に目をやると、何年も手にとっていなかったハン・ガンさんの小説『少年が来る』の原書が目に入った。開くと、文字が消えかかった韓国語のレシートが挟まっている。カード決済の明細なのか、書店名はなかった。日付はちょうど10年前、2014年9月30日。会社を辞めて、ソウルの語学堂に留学していた時に買った本だった。その年の5月に刊行され、書店に平積みされていたのを手にとったのだろう。当時語学堂で下から2番目のクラスにいた私が簡単に読めるはずもなく、わからない単語の下に鉛筆で薄く線が引かれていたが、それも11ページ目で終わっていた。
あれから10年経った2024年10月。『少年が来る』をはじめ、日本語に訳されたハン・ガンさんの4作品がクオンから、そしてその運営下にある書店チェッコリからも、日本各地に続々と届けられている。それだけではない。ほかにも3社からハン・ガンさんの邦訳4作品が、多くの人の手に渡っている。
「私の好きな作家さんがノーベル文学賞!」「大切に読んできた本が注目されて嬉しい」。SNSには受賞を祝い、喜ぶ声が日本語でもあふれていた。どの人も、ハン・ガンさんの受賞が「自分ごと」だった。ここがハン・ガンさんの母国でなくとも、作品を手にし、愛する人たちにとって「自分たちのニュース」なのだ。国をこえて大切なものを共有している、そんな光景に見えた。
隣国とその地の言葉、そこで生まれた本への好奇心だけを原動力に、わからない言葉に線を引きながらページをめくっていた27歳の私はよく考えていた。韓国の本が日本でもたくさん読めるような日が来るのかなあ。隣国同士、考えていることや良いアイディア、経験、作品を本で分かち合えたら、こんなにいいことはないよな。難しいことは抜きにして、純粋にそう思っていた。
気づけば今は、もうそんな日々だ。物語に、さまざまな人生が垣間見えるエッセイ、自己啓発書に絵本も。日本語になった韓国の本と、日常のあちこちで出会えるようになった。一時は「ブーム」だったかもしれない。けれど、本という形になれば、簡単には姿は消えない。さまざまな形で私たちの日常に現れるのが本だ。友人からのプレゼントとして突然贈られてきたり、私のように10年の時を経てふと本棚で再会したり。埃をかぶった親の書庫で、古い一冊を見つけ出す次の世代もいる。韓国からきた本たちも、そうやって日本の日常に少しずつ染み込んでいき、私たちの暮らしの中に息づいていく。
この先10年後、20年後、韓国の本はどれくらい近い存在になっているのだろう。今あやしている生まれてまもない子が、自分で本を選んで買うようになる頃を想像してみる。書店に、図書館に、家の本棚に、当たり前のようにそこに並んでいてほしい。きっと彼らを励まし、癒し、驚かせてくれるはずだ。
発行:CHEKCCORI(チェッコリ)
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